東京の小さなワンルームで、私は毎日を駆け抜けるように過ごしている。朝は満員電車に揺られ、会社ではパソコンとにらめっこ。夜は疲れてコンビニ弁当をかきこむ。そんな日々の中で、私の心をふわりと温めてくれる存在がある。それは、月2回届く花の定期便だ。
最初は、正直言って「どうせ枯らしちゃうかも」と半信半疑だった。忙しい毎日で、植物のお世話なんてできる自信がなかったから。でも、会社の同僚が「花って、意外と癒されるよ」と教えてくれたのがきっかけで、思い切って申し込んでみた。
初めて花が届いた日のことは、今でも鮮明に覚えている。ポストに届いた小さな箱を開けると、そこには見たこともないような、色鮮やかな花たちがぎゅっと詰まっていた。ピンクやオレンジ、紫…まるで絵の具を混ぜたような、美しいグラデーション。その花たちを、まずはそっと手のひらで包んでみた。冷たい花びらの感触が、なんだか心地よかった。
同封されていた説明書を読んでみると、花の名前や特徴、水揚げの方法などが丁寧に書かれていた。初心者にもわかりやすい説明で、これなら私にもできそう、と少しだけ自信がついた。花瓶に水を張り、茎の先を少し切って、花たちをそっと挿していく。その作業が、まるで心を整える儀式のようだった。
最初に届いた花は、リビングの小さなテーブルに飾った。それまで無機質だった部屋が、まるで魔法をかけられたみたいに、パッと明るくなった。花があるだけで、こんなにも雰囲気が変わるなんて、驚きだった。
それからというもの、月2回の花の定期便が、私の日常の楽しみになった。月に2回、花が届く日が待ち遠しくて、まるで子供の頃に楽しみにしていたおやつの時間のようだ。ポストを開ける瞬間、箱を開ける瞬間、花を飾る瞬間。一つ一つの動作が、小さな幸せの積み重ねのように感じられる。
届く花は毎回違う。バラやチューリップなどの定番の花から、名前も知らない珍しい花まで、その時々の季節を感じさせてくれる花たちが届く。説明書を読んだり、インターネットで調べたりして、花の名前や花言葉を知るのも楽しい。
花が届くと、まず最初にすることは、その日のお天気を確かめること。晴れた日には、窓辺に飾って太陽の光を浴びさせてあげる。雨の日には、少しだけ窓を閉めて、優しく見守ってあげる。花たちが、まるで生きているみたいに、毎日少しずつ表情を変えていくのが面白い。
花を飾る場所も、気分によって変えている。リビングのテーブルに飾ったり、キッチンカウンターに飾ったり。時には、玄関に飾って、帰宅した時に「おかえり」と迎えてもらう。ベッドサイドに飾れば、眠る前に花の香りに癒される。どこに飾っても、その場所が特別な空間に変わる。
仕事で疲れて帰ってきた日も、花を見ると心が軽くなる。パソコンの画面とにらめっこしていた目が、鮮やかな花の色に癒される。疲れてコンビニ弁当を食べる時も、花があるだけで、ちょっとだけ贅沢な気分になる。
休日の朝は、コーヒーを淹れて、花を眺めるのが日課になった。ゆっくりと花を愛でながら、今日何をするかを考える。花は、私にとって、ただの飾りではなく、生活のリズムを整える大切な存在になった。
時々、花を写真に撮って、SNSにアップしたりもする。「いいね」や「コメント」をもらうと、ちょっとだけ誇らしい気持ちになる。花をきっかけに、友達との会話が弾むことも増えた。
花を飾るようになってから、私自身も少しずつ変化してきたように思う。以前は、毎日をただこなすだけだったけれど、今は、花を通して、小さな幸せを見つけるようになった。花を眺めたり、花の名前を覚えたり、花瓶を変えたり。そんな日常の些細なことに、喜びを感じられるようになった。
それに、花って、不思議と人に優しくなれる魔法があるみたいだ。部屋に花があるだけで、心に余裕が生まれるのか、イライラすることが減った。以前よりも、人に優しく接することができるようになった気がする。
月に2回届く花の定期便は、私にとって、単なる「お花のサブスク」ではない。それは、生活に彩りを添え、心を豊かにしてくれる、魔法の箱だ。
東京の空は、毎日同じように見えるけれど、花は、その日によって、少しずつ違う表情を見せてくれる。花を眺めながら、私は、自分の毎日も、少しずつ色を変えながら、前向きに進んでいきたいと思う。
これからも、私は、花と一緒に、東京の街で生きていく。きっと、毎日が、もっともっと、彩り豊かになるはずだ。もし、この記事を読んでいるあなたが、少しでも花の定期便に興味を持ったなら、ぜひ試してみてほしい。きっと、あなたの毎日も、花のように、色鮮やかに輝き出すはずだから。